- とし
- I
とし(連語)〔格助詞「と」に副助詞「し」の付いたもの〕「と」を強調して表す。II
「生き~生けるもの, いづれか歌をよまざりける/古今(仮名序)」
とし【利し・鋭し】(1)するどい。 よく切れる。「~・き刀を取りて, 自ら舌を切らんとす/今昔 4」
(2)勢いがはげしい。 すさまじい。III「ぬばたまの夜さり来れば巻向の川音高しもあらしかも~・き/万葉 1101」
とし【妬視】ねたんで見ること。 嫉視(シツシ)。IV「先に昇進した後輩を~する」
とし【年・歳】(1)時間を測る単位。 太陽暦では地球が太陽の周りを一周する時間。 平均三六五・二四二二日で, 平年を三六五日とし, 四年ごとに一日加えて閏(ウルウ)年として補正する。 太陰暦では月が地球の周りを一二周する時間。 大の月と小の月を組み合わせたり, 閏月を加えたりするので, 一年の日数は一定ではない。 暦年。→ ねん(年)(2)ある年次の一月一日から一二月三一日まで。 一年間。「~の始め」「今年は辰の~だ」「~の暮れ」
(3)年齢。 よわい。「一〇歳も~が違う」
(4)相当の年齢。 年輩。「亀の甲より~の劫」
(5)老齢。 老年。 高齢。「もう~だ」「つくづく自分の~を感ずる」
(6)穀物, 特に稲のこと。 また, 穀物の実ること。「かくしあらば言挙(コトアゲ)せずとも~は栄えむ/万葉 4124」
(7)季節。 時候。 時節。「~いとおそき年にて, 三月かみの十日ばかり花盛りなり/宇津保(国譲下)」
~有・り(1)豊年である。「あらはれて~・る御代の印にや野にも山にもつもる白雪/新勅撰(冬)」
(2)長い年月がたつ。「予, 此人を教ふる事~・り/去来抄」
~得(ウ)穀物がよく実る。 豊作である。「~えたる玉田の稲をかけ積みて/栄花(玉のむら菊)」
~惜しむ年の瀬に, 過ぎゆこうとする年を惜しむ。 ﹝季﹞冬。 《片づけて机辺ものなし~/中村若沙》~遅・し閏月(ウルウヅキ)のある年で, 例年よりも季節の来るのが遅い。~が明・ける新しい年になる。 新年となる。~が改ま・る(1)新年となる。 年が変わる。(2)年号が変わる。 改元される。~が返・る年が改まる。 新年になる。~が替わ・る(1)年が改まる。 新年になる。(2)年号がかわる。 改元する。~が立・つ(1)年が明ける。 年が改まる。 新年になる。(2)年月が経過する。~が行・く(1)年を取る。「見かけより~・っている」
(2)一年が過ぎ去って行く。~が寄・る年を取る。 老年になる。~寒くして松柏(シヨウハク)の凋(シボ)むに後(オク)るるを知る〔「論語(子罕)」による。 寒い冬に他の植物がしおれても松柏の葉は緑の色を保っているという意から〕困難苦労に出合って初めて人の真価がわかる。~高・し年とっている。「身はいやしくて~・きことのくるしさ/古今(雑体)」
~立ち返・る新年となる。 年が改まる。 年返る。「年~・るあしたの空の気色/源氏(初音)」
~立・つ新しい年となる。 年が改まる。 ﹝季﹞新年。「~・てば花こふべくもあらなくに/貫之集」
~足(タ)・る年齢が重なる。 年を取る。「いはけなく~・らぬ程におはすとも/源氏(東屋)」
~問わんより世(ヨ)を問え年齢の多少を問題にせずに, 過去にその人がどのように過ごしてきたか, 経験の多少を大切にせよ。~には勝てない年を取ると, 健康や体力が気力に伴わない。「気は若いが, やはり~ない」
~の余(アマ)り陰暦で, 閏月(ウルウヅキ)のあること。「この月の~にたらざらば鶯ははや鳴きぞしなまし/後撰(冬)」
~は争(アラソ)えない気持ちはまだ若い者に負けないつもりでも, 老年になると体力や容姿の衰えが出る。~は薬年を取るにつれて思慮分別が加わることのたとえ。「成人すれば心までおとなしくなるものか, ~よ/浄瑠璃・鎌田兵衛」
~守(マモ)・る大晦日(オオミソカ)の夜, 家中の者が集まり, 夜明かしをして新年を迎える。 としもる。 ﹝季﹞冬。~を追・う年数の経過に従う。「~・うごとに」
~を食・う年齢を重ねる。 年を取る。「彼は若々しく見えるが意外に~・っている」
〔予想していたよりも実際の年齢のほうが上である場合に用いられることが多い〕~を越・す旧年を送って新年を迎える。~を取・る年齢が加わる。 老年になる。~を拾・う年をとる。 老齢になる。「斯様なお婆さんに成つちや終だ……~・ふばかしで/家(藤村)」
~を経(ヘ)る(1)長い年月がたつ。(2)年齢を重ねる。 年を取る。~を跨(マタ)・ぐ二年にわたる。 翌年にかかる。Vとし【徒死】むだに死ぬこと。 犬死に。VI「戦場に駆り出されて~する」
とし【敏し・聆し】〔「とし(利)」と同源〕(1)行動がすばしこい。 敏捷(ビンシヨウ)だ。「鷦鷯と隼といづれか~・き/日本書紀(仁徳訓)」
(2)鋭敏だ。 さとい。VII「大蔵卿ばかり耳~・き人はなし/枕草子275」「心~・き者にて/源氏(葵)」
とし【杜詩】中国, 唐代の詩人, 杜甫(トホ)の詩。VIIIとし【疾し・捷し】〔「とし(利)」と同源〕(1)進む度合が大きい。 速い。「船~・く漕げ/土左」
(2)時期的に前だ。 時間的に先である。 早い。IX「春や~・き花や遅きと聞き分かむ鶯だにも鳴かずもあるかな/古今(春上)」
とし【都市】(1)繁華な都会。 人口が集中する地域。(2)人間・金融・情報などの集中により, 近代資本主義社会を形成する中核的役割を担う地域。(3)人口を集中させる機能や施設を計画的に一定の空間に集めたところ。「研究学園~」
Japanese explanatory dictionaries. 2013.